ヨーロッパの地理的表示付きのワインのラベル表示はAOPとIGPの2種類!のはずですが、加盟国がもともと使用していたDOCG等の表示がまだまだ健在なのは、EUの求心力のなさだったりして?
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

EUには、域内の特定の地域で造られた農産物(ワイン、チーズ、オリーブ、ハムなど)を法的に認証し、これを保護する仕組みがあります。
他の場所の企業が同じ名称を使用した製品をつくって消費者を混乱させないようにするためです。

EUに加盟する伝統的ワイン生産国(フランス、イタリア、スペイン、ドイツなど)で造られたワインは、この仕組みによって保護されています。

ヨーロッパの認証保護地域から来たワイン、すなわち地理的表示付きのワインのラベルを見ると、その趣旨を示す文言を見つけることができます。

実際には、そうした文言は大きく2通り存在します。
ヨーロッパの「地理的表示付きのワイン」は2種類に大別できるからです。

(1) AOP(原産地呼称保護)

産地の範囲だけでなく、ブドウ品種やブドウ栽培方法、ワインの醸造技術や熟成方法まで厳しく規定された産地の名前がつけられたワイン。

(2) IGP(地理的表示保護)

上記(1)に比べると産地の認定範囲が広く、ブドウ品種や生産方式などの自由度が高い産地の名前がつけられたワイン。

(1) のAOPAppellation d'Origine Protegee というフランス語の略で、
直訳すると「保護された原産地の称号」という意味です。
英語ではProtected Designation of Origin(PDO)となります。
最も厳しく規定されたワインです。

(2) のIGPIndication Geographique Protegee というフランス語の略で、
直訳すると「保護された地理的な表示」という意味です。
英語ではProtected Geographic Indication(PGI)となります。

ヨーロッパ域内で消費される日常的安ワインを除けば、ぼくたちが目にするヨーロッパのワインは理論上、(1) AOP か (2) IGP のいずれかの文言がラベルに書かれているはずです。

しかし実際には、ことはそう簡単ではありません。少なくとも現在は・・・。

その理由は次のとおりです。

.茵璽蹈奪儚胴颪AOP/IGPという文言を自国語でラベル表示することが許されており、実際にどの国の生産者もそうしているから

△気蕕法AOP/IGPという文言を統一して使うというEUの新ワイン法は2012年に完全施行されたばかりで、市場に流通しているワインの多くはまだ、それ以前に各国それぞれが定めていた原産地呼称のラベルが貼られているから

しかも、各国政府は自国内のワイナリーに、EUの新ワイン法制定以前から使われている文言を使い続けてもよいと許可しているから

docg
 ▲イタリアのDOCG表示は今も健在


そういうわけで現在は、EUが新たに制定した"AOP" や "IGP" という表示を使っているワインを見つけるほうが難しい・・・という笑えない状況になっているのです。

英国のEU離脱騒動に見られるようにEUの求心力低下が近年、顕在化してきていますが、ワインの世界でも似たような状況なのかな・・・。
AOPではなくDOCGと書かれているイタリアワインのボトルを眺めながら、ふとそんなことを思ったのでした。

(2017年5月31日)