ワインのブドウは成熟度の高さが重要ですが早熟ならいいというものでもなく、またブドウはわんさか実がなるよりも収穫量を抑えたほうが美味しいワインができます
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回に引き続き、ワインボトルの裏ラベルやワイントークの中でよく出くわす、
「ブドウ栽培(Viti)」についての用語をご紹介します。 


◆成熟度 Ripeness

ブドウが十分に熟した段階で収穫することは、ワイン生産において非常に重要なポイントの一つです。

ブドウが未熟な段階では、酸度が高く糖度が低い状態となっています。
これはあらゆる果物についていえることで、かじると酸っぱい味がするはずです。

ブドウの成熟が進むにつれて、甘味が増し、酸味が低下していきます。
そして味わいにコクが出て、複雑性も増していきます。

果皮は薄くなっていき、種や梗さえも熟していきます。
とくに黒ブドウでは、果皮や種や梗に含まれる渋味成分もこなれていきます。

そのため、ブドウの成熟度がどのくらいの段階であったかというのは、ワインのスタイルを決定付ける重要な要素となります。

とはいえ成熟度というのも、いささか主観的な問題です。

ブルゴーニュ地方のような冷涼な産地では、ブドウの成熟度が十分に高まるという状況は、毎年のようには起こりません。
そのため、そのようなタイプのワインの標準からみて "例年よりは" 熟度の高いヴィンテージなら、「リッチでボディのあるワイン」といわれたりします。

カリフォルニアやオーストラリアのような温暖な気候の地域では、ブドウの成熟度は
ほぼ自動的に高まります。
そういった環境では、ブドウがあまりに早く熟しすぎないようにすることのほうが重要だったりします。

ブドウが早熟すぎると、糖度だけ高くても生理学的には未熟なブドウとなり、
ワインにしたときアルコール度数ばかり高くて肝心の風味が未発達なものになってしまうからです。
"カラダは早熟でも人格が未熟なティーンエイジャー" みたいな感じですね。

そういうわけで、ブドウの完全な成熟度という概念については、とくに決まった定義は存在しないのが実情です。

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 ▲ブルゴーニュ地方シャンボール・ミュジニィ村のドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエは「低収量」かつ自然なワイン造りを行なう。


◆低収量 Low Yields

一般に、1本のブドウの木がブドウの実をたくさん持てば持つほど、そのブドウ果汁の味わいの凝縮度は低下し、ワインにしたときの品質(したがって値段も)下がっていきます。

また単位面積当たりの収穫量が多すぎると、ブドウの風味は薄まっていきます

そこで、高品質のワインを造ろうとする場合は、意図的にブドウの収穫量を低減させることによって、風味の凝縮したブドウを育てるようにします。

そのための方法は大きく2つあります。

ひとつは、冬の間にブドウの木を剪定して、残す枝の数を減らすことです。
もうひとつは、ブドウの成熟期に未熟な房を間引くことです(グリーン・ハーベストと呼ぶ)。

これと同様の意図から、とくにヨーロッパを中心に「密植」というテクニックが使われています。
ブドウの木と木の間隔を狭めて、1本あたりにつく房数を減らすのです。

密植にすると、単位面積あたりの土壌の水分や栄養分をより多くの木々で奪い合うため、木1本あたりに割り当てられる養分量が減り、1本の木が付けられる房の数が減るというわけです。

たとえば単位面積内おいて、合計12房のブドウの実を、2本の木が抱えるよりも3本の木が抱えるほうが、ワインは美味しくなります。

100m四方(1ヘクタール)にだいたい1m間隔でブドウの木を植えると1万本になります。
1ヘクタールあたり1万本以上であれば密植と呼んでよいでしょう。

密植はフランスのボルドー地方やブルゴーニュ地方を中心にヨーロッパで見られますが、
逆にアメリカやオーストラリアでは疎植(密植の逆)が多いです。

ブドウの味わいの凝縮感を高めるために、様々な工夫がなされているのですね。

(2017年6月9日)