木樽由来の樽香は多くのワインファンを魅了しますが、樽香があるからといって良いワインというわけではありません
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワイン造りには

1. ブドウ栽培 Viticulture
2. ワイン醸造 Vinification


という2つのステップがあり、それぞれにテクニックや専門用語があります。
前回まで上記のうち Viti すなわち「ブドウ栽培」の専門用語をご紹介してきました。

今回からは2. の Vini すなわち「ワイン醸造」に関するテクニック、用語についてご紹介していきます。

この「ワイン醸造」は、次の2つの工程に分けることができます。

(1) 発酵
 ・・・ブドウ果汁がアルコール発酵によってワインに変わる工程です。

(2) 熟成
 ・・・発酵してできあがったワインを別のタンクか樽に移し替えて、しばらく寝かせます。こうすることで、ワインの中に含まれる不純物(オリ)が下のほうに沈殿していき、ワインが落ち着いてきます。ワインのバランスや風味が向上します。

造ろうとするワインのタイプによって、工程全体の期間は3ヶ月から5年にも及んだりします。
それこそ生産者が資金繰りに窮することがなければ、もっと長い期間をかけることもあります。

生産者がワイン造りをする方法には、レストランのシェフがキッチンで調理をするときほど多くの選択肢があるわけではありませんが、それでも様々なテクニックがあります。

アルコール発酵や熟成に関してもいろいろな用語を聞くことがあると思いますが、なかでも「樽」に関する話は、おそらく最もよく耳にするものではないでしょうか。

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 ▲チリなど新世界ワインのシャルドネには樽香が顕著なものが多い

◆木樽の使用 Oak Barrels


生産者は発酵や熟成の工程で木樽を使用することがあります。
木樽はワインに木の樽の風味、いわゆる「樽香」をつけます。

この樽の香りが、多くのワイン飲みたちを魅了します。
木樽は、ワインの口当たりや色にも影響を与えます。

木樽は高価です。
いちばん高級とされるフレンチオーク(フランス産の木樽)だと、容量200リットル強の1樽あたり10万円以上します。
逆に言えば、この高価なコストこそ、生産者が自分のワインに木樽を使っていることを強調したがる理由でもあります。

とはいえ、すべての木樽が同じわけではありません。
木材の原産地、木樽の内壁の燻し具合、その木樽が新樽なのか、何回か使ったあとの旧樽なのかによっても、樽の効果は異なります。

木樽のサイズによっても、ワインへの樽香の付着具合は異なってきます。
小さいサイズの木樽のほうが大きいサイズの木樽よりも、ワインに樽香がしっかりつきます

その理由は、同じ量のワイン液体であれば、一つの大樽にドカンと全部入れた場合と、たくさんの小樽に分けて入れた場合とでは、後者のほうが、ワイン液体と木樽内壁とが接する表面積合計が大きくなるからです。

世の中には、樽香がするだけでそのワインは良いワインだと決めつける人もいますが、そう単純なものではありません。

たとえばソーヴィニヨン・ブランやリースリングのように、果実味やフレッシュさを楽しむタイプのワインであれば、樽香はかえって余計なものとなります。

ですから、必ずしも樽を使っているから良いというわけではありません。
そのワインのスタイルに合った造り方が大事だということですね。

(2017年6月11日)