「樽発酵」か「樽熟成」か・・・そこが問題だ 〜 発酵から熟成まで木樽を使用したワインよりも熟成だけを木樽で行なったワインのほうが樽香が強くなるフシギ
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワイン造りにおける木樽の使用には、「樽発酵」と「樽熟成」の2通りがあります。

●樽発酵
・・・ブドウ果汁を木樽に入れて、樽の中でアルコール発酵させてワインにする。

●樽熟成
・・・すでに発酵を終えてでき上がったワインを木樽に入れて、樽の中で数ヶ月から数年かけて熟成させる。

樽発酵の場合は、ブドウ果汁が発酵を終えてワインになっても数ヶ月はそのまま樽の中に静置して熟成させます。
つまり、樽発酵させるときは樽熟成もセットで行うのが普通です。

ですから、あえて「樽熟成」と言う場合は熟成だけを木樽で行ったものであり、
ワインの発酵は木樽ではなくステンレスタンクなどの容器で行われたものと考えて良いでしょう。

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 ▲ワインを熟成中の木樽(山梨・勝沼にて)


「ブドウ果汁を樽に入れ、ワインになったら樽から出す」というのが典型的な樽発酵のやり方ですが、
こうした典型的な樽発酵は白ワインを造るときに行われ、赤ワイン造りではあまり行われません

その理由は非常に現実的なものです。
赤ワイン造りでは果汁と果皮、実、種などをまるごと漬け込んで、色素の抽出を行いながら発酵させるので(マセラシオン)、
でき上がった液体(ワイン)を樽から出したあと、色の付いた残留物が木樽の内壁に頑固に付着してしまいます。
そのようになった大量の小樽をキレイに洗浄するのは、手間も時間もコストもかかってタイヘンだからです。

ですから赤ワインの発酵はステンレスタンクや巨大な樽など大型の容器の中で行なうことが多いです。
そして発酵後、容器から抜き取った赤い液体(つまりワイン)だけを小樽に移し、樽熟成させるのです。
(軽めでフルーティなタイプの比較的安価な赤ワインは、この樽熟成を行わない場合もあります。)

生産者によっては、赤ワインの工程の "一部だけ" 樽発酵を行なうことがあります。
ステンレスタンクで発酵を開始させ、赤くなってきた液体(ワインになりかけ)だけを抜き出し、それを木樽に移してアルコール発酵を完了させるという方法です。
もしも「樽発酵」と書かれている赤ワインを見かけたら、おそらくはこうした方法で途中から樽発酵させたものでしょう。

ところで白ワインの場合は、「樽発酵」か「樽熟成」かは、わりと重要なポイントです。
というのは、樽発酵&樽熟成を行なったワインは、樽熟成だけを行なったワインに比べると、それほど樽の風味がしないのです。

上述のとおり樽発酵したワインは樽熟成もセットです。
樽発酵+樽熟成のシャルドネのほうが、樽熟成のみのシャルドネよりも、木樽との接触時間が長い分だけもっと樽香がしそうなものですが、実際には逆なのです。

その理由は主に次の2つです。

|発酵の場合、アルコール発酵中に、酵母が木樽由来の風味成分も少々分解してしまうから。
発酵終了後に酵母の死骸(オリ)が木樽の内壁を覆い、木樽風味成分がワインに移るのをブロックしてしまうから。

こうしたわけで、発酵から木樽を使ったワインよりも熟成だけ木樽で行なったワインのほうが樽香が強くなるのです。

ワイン造りのテクニック、ほんとうに奥が深いですね!

(2017年6月13日)