発酵温度によってワインのスタイルも違ってきます 〜 近代的なワイン造りは、発酵温度を人為的にコントロールできるようになったことから道が開けました
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

「ワイン醸造」に関するテクニックや用語についてご紹介しています。
前回まで木樽の使用、樽発酵と樽熟成の違いについて述べました。

ワイン造りのテクニックはほかにもいろいろあります。
代表的なものを説明していきます。


◆発酵温度管理

近代的なワイン造りは、冷却装置を備えたステンレススチール製タンクやコンピュータ制御による冷却設備を利用することにより、人為的に発酵温度をコントロールできるようになったことから道が開けた、と言っていいでしょう。

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 ▲冷却装置を備えたステンレススチール製タンク


アルコール発酵の温度は、白ワインでは12℃〜25℃くらい、赤ワインでは25℃〜34℃くらいとなりますが、
この発酵温度が最終的にできあがるワインのスタイルに大きな影響を与えます。

そのため、発酵温度管理は非常に重要なのです。

アルコール発酵をしている間、酵母は糖分をアルコールと二酸化炭素に分解するだけでなく、ほかにも様々な物質を微量に作り出しています。

そうした物質は当然、ワインの風味に影響を与えますが、生成される物質の種類や量は発酵条件によっても異なり、なかでも発酵温度は大きなポイントとなるのです。

アルコール発酵という化学反応は熱を生み出すので、発酵中のワインに何も手を加えずそのままにしておくと、温度は30度以上にもなります。
これを、造ろうとするワインのタイプに応じて、人為的にコントロールするのが温度管理です。

白ワインでは、15℃以下の低温で発酵させるとフレッシュでフルーティーなタイプのワインになります。
いっぽう20度以上の高めの温度で発酵させると、口当たりがふくよかで肉厚なワインになります。

ですから爽やかでシンプルなタイプの白ワインは低めの温度で、複雑感を伴う高級タイプの白ワインは高めの温度で、発酵させます

赤ワインでは、白ワインと同様に高めの温度で発酵させると複雑感のある高級タイプのワインができやすくなります
また温度が高めのほうが
マセラシオン時の抽出効率も高まります。
紅茶でも、ぬるま湯よりも温度の高いお湯のほうが、色も成分もよく抽出されますよね。

しかし、発酵温度が35℃を超えるようになると、酵母が高温に耐えられず死んでしまい、アルコール発酵が途中で止まってしまうというリスクがあります。
そのため30℃くらいを上限にして温度管理を行なうのが普通です。

またピノ・ノワールのようにアロマが華やかでエレガントな赤ワインを造るときは、温度を低くして意図的に発酵を遅らせることが行なわれています。
発酵前低温マセラシオン」といい、果皮・果実・種子
を漬け込んだ果汁を発酵開始前に一定期間、低温で静置し果皮成分を抽出させることによって、色合いやアロマ、果実味の華やかなワインになります。

こうした温度管理は50〜60年ほど前は革命的な手法でしたが、いまではどのワイナリーでも行なう当たり前の手法となっています。

発酵温度管理と関連してステンレススチール製タンク、いわゆるステンレス・タンクについても少し触れておきましょう。

ステンレス・タンクは、白ワイン・赤ワインを問わず、現代ではほとんどのワインの発酵に使われる衛生的なステンレス金属製の大型の容器です。
たいてい温度管理装置が備わっています。

ワインの生産者が「このワインはステンレスタンクで発酵を行なっており・・・」と言うのを聞いたら.、
それは次の3つのうち、いずれかの意味だと考えてよいでしょう。

.屮疋λ寨茲良味を生かすため、このワインには木樽を一切用いていない。
 (ソーヴィニヨン・ブランやリースリングなどアロマティックなワインは通常そうです)

△海離錺ぅ鵑話発酵はしていないが(つまりステンレスタンクで発酵)、樽熟成を行なっている。
 
自分たちのワイナリーがステンレスタンクのような設備に多額の投資をしていることをアピールしている。


ぼくたちが日頃飲んでいる様々なタイプのワインも、こうした温度管理の工夫に知恵が絞られているんですね!

(2017年6月14日)