アルザス地方はフランスの中ではドイツ的でユニークなワイン産地 〜 その背景には、ドイツになったりフランスになったりを繰り返してきたアルザスの歴史がありました
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

フランス北東部に位置するアルザス地方は、ドイツとの国境のすぐ近くにある魅力的なワイン産地です。
ドイツのバーデン地方とちょうどライン河を隔てたところにあります。

アルザスワインはフランスワインの中でも独特です。

まず、ワインは基本的にすべて、アルザスという産地名だけでなくブドウ品種名も名乗ります
ドイツと同じく、アルザスはリースリングが有名です。

また、すべてのアルザスワインは "フルート型" と呼ばれる細長く背の高いボトルに詰められています。
これもドイツと似ています。

alsace_riesling
 ▲フルート型のボトル 〜 ラベルには産地名ALSACEとともにブドウ品種名RIESLINGが書かれている

アルザス地方の緯度がずいぶん北にあることから、きっと寒い気候なのだろう・・・と思うのではないでしょうか。

さにあらず。
アルザス地方を南北に貫くヴォージュ山脈が西から来る雲をせき止めるので、雨が少なく、とても日照量が多く、温暖で乾燥した気候なのです。

実際、アルザスは降雨量がフランスで最も少ない産地です。
畑はほとんど東向きです。
一言でいえば、ブドウの生育に理想的な気候なのです。

アルザス地方について語るには、地理的なことだけでなく歴史もすこし見ておきたいところです。

前述のようにアルザス地方はフランスとドイツとの国境に位置していますが、
この地方は歴史上、フランスになったりドイツになったりしてきたのです。

アルザス地方はもともと(5世紀)フランク王国の領土にあり、
9世紀にフランク王国が西・中部・東に3分割されたとき、東フランク王国(現在のドイツの基礎)の領土となりました。

東フランク王国が10世紀以降、現在のドイツにあたる神聖ローマ帝国(962年〜1806年)となってからも、アルザス地方は700年近くの間その領土内にありました。

アルザスが最初にフランスの領土となったのは1648年のことです。

カトリックとプロテスタントが争った三十年戦争(1618年〜1648年)の終結時に、ウェストファリア条約によって、戦勝国であるフランスが神聖ローマ帝国からアルザス地方を得て併合したのです。

それから200年以上にわたってアルザス地方はフランス領でしたが、
1870年〜1871年の普仏戦争(プロイセン<後のドイツ帝国>とフランスの戦争)で勝利したプロイセンがアルザス地方をフランスから取り戻しました。

プロイセンは1871年にドイツ帝国となりましたが、その後1914年〜1918年の第一次世界大戦で敗北し、
1919年のヴェルサイユ条約によって、戦勝国フランスがアルザス地方を再び領土としました。

しかし第二次世界大戦中の1940年、ナチス・ドイツがアルザス地方を占領しドイツの領土としました。
そして1945年のナチス・ドイツの降伏によりアルザス地方がフランス領土となり、現在に至っています。

アルザス地方は今日でも、言語(アルザス語はドイツ語の方言)、食文化、建築物などの面でドイツっぽさが色濃く残っています。
ワインのスタイルやブドウ品種などに共通項が多いのも、こうした歴史があったからなのですね。


(2017年7月28日)