バローロとバルバレスコには伝統派スタイルとモダン派スタイルがありますが、近年では両者の境界はぼやけてきています
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

バローロとバルバレスコには、フランスのブルゴーニュのワインと共通点があります。
それは、自分にとって本当に美味しいワインを楽しむには、好みに合った良い生産者を選ぶ必要があるということです。

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 ▲エリオ・アルターレのモダン派バローロ


バローロとバルバレスコのワインには、大きく分けて伝統的なスタイルモダンなスタイルがあります。

● 伝統的スタイル

伝統的スタイルの製法は、30〜60日をかける「長期のマセラシオン」と、
大樽を用いた4〜8年の「長期の大樽熟成」が特徴です。

伝統的スタイルのワインはタンニンがより強靭で、飲み頃になるまで何年もかかります。
逆に言えば、モダンなスタイルのワインよりもさらに長期熟成に耐えうるワインです。

モダンスタイルに比べると酸化熟成によって色調がより淡くオレンジがかり、香りもドライフルーツのような、ひなびたニュアンスとなります。

● モダンスタイル

モダンスタイルの製法は、温度管理のもとで数日から2週間程度行う「短期のマセラシオン」と、
新樽を含むフレンチオークの小樽を用いた1年半〜2年の「短期の小樽熟成」が特徴です。

発酵・マセラシオンの工程では短期間で強い色素抽出のできる回転式発酵タンクが用いられる場合があります。

モダンスタイルのワインは色が濃く、樽香が顕著で、若々しい果実味、凝縮感を伴うことが特徴です。
果実味がより強調されており、それほど長期熟成させなくてもヴィンテージ後3年から5年で楽しむことができます。

大樽熟成と小樽熟成の違いについて簡単に言うと、
・大樽熟成は、あまり樽の個性をワインに加えずにゆっくりと酸化熟成させることを目的としています。
・小樽熟成は、しっかりした樽の個性を意図的にワインに加える手法です。

1980年頃からモダンスタイルのバローロ・バルバレスコを造る生産者が登場した背景には、
従来型の長期マセラシオンだとタンニン分が多量に抽出されてしまい、
そのタンニン分を柔和にするために余計に長い樽熟成が必要になっている、という問題意識がありました。

その頃からバローロ・バルバレスコの生産者は、伝統的スタイルのワインを守って造り続ける者とモダンスタイルのワインを造る者に分かれていきました。
しばらくはこの両者は明確に分かれ、同じバローロ・バルバレスコを名乗っていても、まったく異なるスタイルのワインを造っていたようです。

しかし近年では両者の手法をミックスした折衷型で造る生産者が多くなっています
現在でも一部の生産者は伝統派かモダン派に色分けできますが、両者の境はあいまいになってきています。

伝統派もしくはモダン派だと明らかに言えそうなのは、次の生産者です。

バローロの伝統派
・ジャコモ・コンテルノ Giacomo Conterno
・アルド・コンテルノ Aldo Conterno
・バルトロ・マスカレッロ Bartolo Mascarello

バルバレスコの伝統派
・ブルーノ・ジャコーザ Bruno Giacosa

バローロのモダン派
・エリオ・アルターレ Elio Altare
・ドメニコ・クレリコ Domenico Clerico
・パオロ・スカヴィーノ Paolo Scavino
・ルチアーノ・サンドローネ Luciano Sandrone

※上記の4者はいち早くモダンな造り方を採用した生産者たちで「バローロ・ボーイズ」と呼ばれます。


バルバレスコのモダン派
・ガヤ Gaja

※ガヤはフレンチスタイルを取り入れたバルバレスコ近代化の先駆者です

上記以外の優良な生産者は下記のとおりです。

バローロ
・チェレット Ceretto
・ロベルト・ヴォエルツィオ Roberto Voerzio
・エルヴィオ・コーニョ Elvio Cogno
・ピオ・チェザーレ Pio Cesare
・プルノット Prunotto
・フォンタナ・フレッダ Fontana Fredda

バルバレスコ
・マルケージ・ディ・グレシー Marchesi di Gresy

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 ▲マルケージ・ディ・グレシーのバルバレスコ・マルティネンガ


先述したとおり、近年では伝統派とモダン派の違いはそれほどはっきりしなくなっています。
伝統派でも小樽を一部に採り入れたり、モダン派でも大樽熟成の期間を一部採り入れたりするようになっているからです。

ほとんどの生産者はもはや中間型であり、あまり伝統 vs.モダンといった図式で対比しても意味がなくなってきているように思います。

現在ではむしろ、自らのテロワールを最大限に生かしたワインを造るために、ベストな製法を取捨選択しているということなのでしょうね。

(2017年8月7日)