キアンティ・クラシコこそが本来のキアンティだった 〜 キアンティを名乗れる地域が拡大してしまったため、元々のキアンティ地区がクラシコを名乗るようになったのです
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回はキアンティについて書きましたが、今回はより限定された地域であるキアンティ・クラシコについてです。

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 ▲キァンティ・クラシコ (フォントディ)


●キアンティ・クラシコ Chianti Classico

キアンティ・クラシコは、千年以上にわたってブドウが栽培され、14世紀からキアンティの名でワインが造られていた地区です。

現在はDOCGキアンティと名乗れる地域が非常に広範囲に広がってしまっていますが、
本来はこのキアンティ・クラシコ地区で造られたワインがキアンティと呼ばれるワインだったのです。

1716年にトスカーナ大公国のコジモ3世がキアンティの生産地区を公的に定めました。
これは世界で最も古い原産地呼称のひとつであり、現在のDOCGキアンティ・クラシコのエリアとほぼ一致します。

【参考】トスカーナ州の地図 〜 キアンティとキアンティ・クラシコ

その後、20世紀以降のイタリアではテロワールよりも政治的な理由を優先して原産地が定められてきた経緯があり、法律がイタリアワインの品質向上の足かせになっていた時代が長く続いていました。

キアンティについても同様でした。

キアンティのワインがあまりに人気が高いので キアンティをたくさん売ればトスカーナ州がもっと儲かると考えた地元の有力者が国に働きかけ、
1932年以降、キアンティの生産地区をもともとの丘陵地(現在のクラシコの地区)だけでなく周辺の広範な地域までどんどん拡大して、それらのワインをキアンティと呼ぶようになってしまいました。

そこで元々のキアンティの産地であったエリアが、自らをキアンティ「クラシコ」と名乗るようになったのです。
キアンティ・クラシコは
しばらくDOCキアンティ(その後DOCGキアンティ)の一部として位置づけられていましたが、
1996年にキアンティから名実ともに独立して、独自の呼称DOCGキアンティ・クラシコを名乗るようになりました。

キアンティ・クラシコ地区は面積約250平方キロの丘陵地帯です。
シエナの町に近い南のエリアは相対的に温暖ですが、その他は標高が高く比較的冷涼な産地です。
地区内でも場所によって土壌も異なります。

そのためキアンティ・クラシコのワインはスタイルが多様です。
地区内のどのあたりでブドウが育てられてたかによって、力強いワインもあれば繊細なワインもあります。

キアンティ・クラシコはサンジョヴェーゼを最低80%使用することが義務づけられています。
実際にはサンジョヴェーゼ100%で造る生産者もあれば、サンジョヴェーゼ以外のブドウを加える生産者もあります。
後者の中にもカナイオーロなどの土着品種を加える生産者もあれば、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど国際品種をブレンドする生産者もあります。

白ブドウをブレンドすることは現在では禁止されています。
ちなみに白ブドウのブレンドは、以前は可能だったどころか義務付けられていました(後述)。

キアンティ・クラシコのリゼルヴァ Riserva は2年以上の熟成が必要です。
生産者によってはフレンチオークで小樽熟成を行うところもあります。
キアンティ・クラシコのリゼルヴァで高品質のものは、長期熟成も可能です。

キアンティ・クラシコは、キアンティ同様にブラックチェリー、スミレのような香りを伴います。
ものによっては土のようなニュアンスやナッツのような風味も感じられます。
フレンチオークで樽熟成されたモダンなスタイルのものはバニラのような樽香がはっきりと感じられます。

キアンティ・クラシコは、キアンティに比べるとサンジョヴェーゼが持つタンニンがややしっかり感じられる傾向があります。
酸味も比較的ハッキリと感じられる赤ワインです。
果実味の凝縮感を強調したタイプのものもあります。
ヴィンテージ後5〜8年くらいが飲み頃ですが、優良なものなら10年以上でも寝かせられます。

キアンティ・クラシコはだいたい1本2千円〜3千円くらいで売られていますが、良いものになると4千円〜6千円くらいになります。

キアンティ・クラシコは本来、決してパワフルなワインではありませんが、
最近は果実味の凝縮感を前面に出してアルコール度数も高めのタイプが増えているように思います。
フレンチオークでの小樽熟成やカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど国際品種の使用が増えていることが影響しているようです。

多くのキアンティ・クラシコの生産者のなかで、ぜひ取りあげておきたいのはモンテヴェルティーネ Montevertine です。
ワインがキアンティと名乗っていないので、それがキアンティ・クラシコ地区で造られる秀逸なワインであることが見過ごされてしまうのは勿体ないからです。

モンテヴェルティーネは、キアンティ・クラシコ地区の畑からサンジョヴェーゼ100%
非常に卓越したワインを造っている生産者です。

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 ▲ル・ペルゴール・トルテ (モンテヴェルティーネ)

モンテヴェルティーネは、1977年以来ラベルに Chianti の文字を使用していません。
当時のワイン法の規定では、キアンティのワインをサンジョヴェーゼ100%で造ることが認められていませんでした。
キアンティを名乗るためには品質面で劣る地元のブドウ品種や白ブドウをブレンドすることが義務付けられていたのです。

こうしたイタリアワイン法の規定がキアンティの品質向上の足かせになっていると考えたモンテヴェルティーネは「サンジョヴェーゼ100%」にこだわり続け、
サンジョヴェーゼから最高のワインを造るために、あえてキアンティの名を捨てて、無格付(Vino da tavola)で最高レベルのキアンティワイン「ル・ペルゴール・トルテLe Pergole Torte を世に出した、反骨精神を持った生産者です。

ちなみにその後(1996年)イタリアワイン法は改正され、サンジョヴェーゼ100%が認められるとともに白ブドウのブレンドが禁止され、現在に至っています。

ル・ペルゴール・トルテは毎年違う女性の絵がラベルになることでも有名です。
今ではトスカーナIGTとなり、1本1万円くらいしますが、人気ワインのため毎年売り切れてしまいます。

ダークチェリー、ブラックベリー、イチジク、プルーンなどの凝縮したニュアンスの風味を伴う、"上級キアンティ・クラシコ" です。
少々値は張りますが、もしもお店やレストランで見かけたら、ぜひ一度は試していただきたいワインです!

(2017年8月12日)