プリオラートは12世紀に修道士が拓いた秘境の産地 〜 ずっと忘れ去られていましたが1980年代末に再発見され、力強く凝縮感のある赤ワインで有名になりました
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

12世紀のこと、修道士たちがとても険しいモンサント山脈の岩山の中に修道院を築きました。
そして、その急峻な山の斜面にブドウ畑を拓きました。

その土地で生活することは非常に困難だったので、時が過ぎると修道院は閉鎖され、そのブドウ畑は放置されていました。
そのエリアはやがて、プリオラート Priorato という名で知られるようになりました。

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 ▲トーレスのプリオラート赤サルモス

20世紀になって・・・というよりつい30年ほど前の話ですが1980年代末に、いくつかのワイン生産者がこの土地に入植しました。

彼らはこの土地が力強い赤ワインをを造るのに理想的な条件を備えていること、とくに20世紀初期に地元の人によって植えられた古木から、とても凝縮感のあるワインが造れることを "再発見" したのです。

こうして、それまで無名だったプリオラートが突然、 脚光を浴びるワイン産地となりました。

とはいえプリオラートが観光地になったことはありません。
カタルーニャ地方の中心都市バルセロナから南西方向に150〜160kmほどのところに位置していますが、急峻なモンサント山脈の岩山の中にあるため、辿り着くのが容易ではないからです。

※プリオラートの位置はこちらの記事を参照

主に粘板岩と片岩からなるこの産地の火山性の土壌は肥沃ではなく、ブドウ以外の作物は育ちません。
気候は険しい大陸性気候で、夏は非常に暑く、冬は非常に寒くなります。

急な斜面は階段状のブドウ畑になっており、多くは耕作が困難です。
作業は人間の手によるほかなく、ブドウの収量も非常に低いです。

こうした険しい土地で、ガルナッチャカリニャンというスペインの土着品種を主要品種として、ものすごく凝縮感があり力強い赤ワインが造られているのです。

プリオラートのワインはたいてい、この土地のようにゴツく、力強いタンニンと高いアルコール度数をもったスタイルになります。
中にはアルコール度がものすごく高いため、辛口でもほとんどポルトのような甘味を感じるものもあります。

スペインワイン法の品質分類でDOCa(特選原産地呼称ワイン)にランクされているのは、伝統的名醸地リオハとプリオラートの2つだけです。

プリオラートでのワイン造りは低収量のわりにコストがかり、市場流通量も少ないため、価格も必然的に高くなります。

最も高評価とされるクロス・エラスムス Clos Erasmus は生産量が極度に少なく、日本では入手困難なワインです。

プリオラートの有名生産者であるアルバロ・パラシオス Alvaro Palacios (1980年代後半に最初にこの産地を再開発した造り手のひとつ)が造るレルミータ L'Ermita というワインは日本でも購入できますが、ヴィンテージによって1本7万円から15万円くらいします。

もちろん、もうすこし手頃なプリオラートもあります。
スペインの大手ワインメーカーであるトーレス Torres も2007年からサルモス Salmos と言う名前の赤ワインを出しています。価格は1本4千円ほどです。

このサルモスも、非常に果実の凝縮感があって力強く、プリオラートらしいワインです。
ぼく自身、以前にいたワインバーで取り扱っていた関係で、何回か試飲しています。
プリオラートに興味のある方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。

(2017年8月27日)