アルゼンチンの最重要ブドウ品種はマルベック 〜 昔はボルドーでも広く栽培されていましたがフィロキセラの被害を受け、いまはメンドーサで才能を開花させています
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アルゼンチンで最も栽培面積の大きいブドウはマルベックです。

このマルベック、19世紀の前半まではフランスのボルドー地方でも広く栽培されていました。
しかし自然の禍(わざわい)により、ボルドーのマルベックの大半が消え去る運命となってしまいました。

最初の禍は1860年代にフランスを襲ったフィロキセラ
Phylloxera による被害で、これにより実質的にほぼすべてのブドウ樹がダメになってしまいました。

フィロキセラは体長1mmほどのアブラムシの一種で、ブドウ樹の根や葉に寄生する恐怖の害虫です。
アメリカ大陸から輸入したブドウの苗木に付着してフランスに入ってきたとされ、10年あまりの間にフランス全土に蔓延し、さらにはスペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、イタリアにまで広がりヨーロッパ各地のブドウ樹に甚大な被害をもたらしました。

フィロキセラ禍をうけてブドウ樹を植え替えたとき、ボルドーの生産者の多くはマルベックの代わりにカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを植えました。
マルベックが完熟するには十分な日照量と温暖さを必要としますが、ボルドー地方はそのような気候条件が常に得られる土地ではないからです。

この土地では、気候のよくない年にはマルベックは病気になりがちで、とくに霜に対する弱さがありました。
実際1956年にボルドーが霜の被害を受けたとき、マルベックの収穫全体のうち4分の3がやられてしまったそうです。
それ以降はボルドーでマルベックを育てる生産者はますます少なくなりました。

(皮肉なことに、いま隣国チリで頑張っているカルメネー
もマルベックと似たような運命を辿ってきています。カルメネーレはボルドーの気候条件下で育てるにはやや晩熟すぎるのです。)

なおフランスでは、南西地方のカオール Cahors においてマルベックはいまでも重要なブドウ品種です。
とても色調が濃く、タンニンのしっかりとしたフルボディの赤ワインです。

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 ▲カイケン・ウルトラ・マルベックはチリの生産者モンテスがメンドーサで手がけるワイン

いっぽう、19世紀半ばにアルゼンチンに持ち込まれたマルベックは、メンドーサ地域においてその才能を開花させました。
メンドーサの温暖で乾燥した気候がマルベックにピッタリとはまったのでしょう。
アルゼンチンの生産者だけでなく、外国からもこの地でマルベックを手がける生産者がいます。

今日では、マルベックの栽培面積はメンドーサ地方が世界中の産地で最大で、アルゼンチンで最も重要なブドウ品種となっています。
ルハン・デ・クージョやアンデスのふもと(標高1500m級の産地もある)などの地域でも、おいしいマルベックが産み出されています。

アルゼンチンのマルベックは色調が濃厚で果実味の豊かな赤ワインになります。
フランスのカオールのワインほどはタンニンが強く感じられず、より若飲みのできるスタイルが一般的です。

機会があれば、アルゼンチンのマルベックとカオールのマルベック、同時に並べて飲んでみたいですね!

(2017年10月10日)