世界最大のワイン国内消費量を誇るアメリカ 〜 その原産地呼称制度AVAは産地の境界線を定めるのみで品種・栽培・醸造方法に関する規定はありません
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アメリカ合衆国にもワインの原産地呼称制度が存在します。
様々な生産地域を規定しているという点では、伝統的なフランスの仕組みと同じです。

しかし AVA(American Viticultural Areas)と呼ばれるアメリカの制度は、生産地域の地理的な境界線を設定するのみで、栽培可能なブドウ品種とか、単位面積当たりの収穫量(収量)とか、栽培・醸造方法など、その「土地」とそこで造られる「ワインのスタイル」を結びつけるような事柄は定められていません。

したがって、ワインのラベル表示において、AVA名(すなわち生産地域の名前)はおのずとブドウ品種名よりも二次的な扱いをされているのが実情です。

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アメリカの生産者はワインの名前をつける際、小さく限定されたAVA名よりも、むしろ広めのAVA名をつけることがあります。
それは、原料ブドウやブレンド用ワインを購入するための選択肢を広く持っておくためです。

たとえば、ソノマ・カウンティ(郡)内のアレキサンダー・ヴァレーにあるワイナリーの例を考えてみましょう。

もしそのワイナリーがソノマ・カウンティ内の他の地域でもブドウを栽培していたり、もしくはそうした他地域からブドウを買ったりして、あるワインを造るためにそうしたブドウも使いたい場合は、より広域なソノマ・カウンティAVAを使います。

アレキサンダー・ヴァレーAVAだと、アレキサンダー・ヴァレー産のブドウを85%以上使わなければならないからです。

ナパなど別のカウンティで育てられたブドウやワインをブレンドしたいときは、もっと広域のノース・コーストAVAを使用します。

低価格のワインを造ることが目標であれば、ノース・コーストよりも安くブドウが手に入るカリフォルニア内のどこかから(例えばセントラル・ヴァレーあたりで大量生産されているブドウなどを)仕入れるために、さらに広域のカリフォルニアAVAを使用することも可能です。

ワイン生産者は、カリフォルニアAVAを上級ワインに用いる場合もあります。
それも、やはりブドウ調達における自由度を最大限に高めておくためです。

個々の「場所」の特定性は尊重しつつも、地理的にまたがるブレンディングの工夫によって、良いワインを手頃な価格で国内の消費者に届けることもまた、ワイナリーにとっては大事なことなのです。

そもそもアメリカは国内のワイン消費量が生産量よりも多い国です。
ですから外国からワインを輸入もしています。

アメリカの国内ワイン消費量は世界最大です(人口が世界第3位という要因も手伝っています)。
そのため、アメリカにおけるワイン造りは当然、まず国内の消費者を意識して行われます。
アメリカワインの総売上高のうち約7割が国内販売によるものなのです。

ヨーロッパの伝統的生産国におけるワイン消費量が減少傾向の中、アメリカのワイン消費量はむしろ増加傾向にあります。
なんとなくですが、ぼくはこのことを肌感覚で理解できます。
以前いたワインショップ&バーは外国からのお客様も多かったのですが、なかでもアメリカ人はみな本当によくワインを飲みます(量も)。

はじめから輸出を意識しているオーストラリアやニュージーランドの生産者とは異なり、アメリカの生産者は、こうしたワイン好きの国内消費者を第一のターゲットにして生産やマーケティングを行っているのですね。

(2017年10月16日)