ニューヨークに初めてブドウを植えたのはオランダ人でした 〜 ニューヨーク州はアメリカで3番目に大きなワイン産地で、フィンガー・レイクスが最重要産地です
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バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ニューヨークはいろんな意味で「世界の首都」といえるかもしれません。
しかし "ニューヨークワイン" といっても、それほど世界で認知されているとは言いがたいでしょう。

それは世界におけるカリフォルニアワインの圧倒的な存在感のせいでもありますが、
2015年の米国財務省データによれば、ワイン生産量においてカリフォルニア州、ワシントン州に次いで
ニューヨーク州はアメリカで3番目に大きなワイン産地なのです。

アメリカ最古のワイナリーであるブラザーフッド社 Brotherhood はニューヨーク州のハドソン・ヴァレーで1839年に創業して以来、いまなお継続して操業しています。
また世界最大のワイン会社であるコンステレーション・ブランズ社 Constellation Brands もニューヨーク州西部フィンガー・レイクス地方に本社を置いています。

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 ▲ブラザーフッド社のピノ・ノワール

ニューヨーク州で最も重要な産地はオンタリオ湖の近くにあるフィンガー・レイクス Finger Lakes です。
名前が示すように細長い11の湖があるエリアで、これら大小の湖が気候の冷涼さを和らげています。
このAVAはニューヨーク州のワインの約3分の2を産出しており、100を超えるワイナリーが存在します。
域内にサブAVAとして
セネカ・レイク Seneca Lake とカユガ・レイク Cayuga Lake があります。

フィンガー・レイクスで最もよく知られるワインはリースリングで、約200種類のブランドがあり、ほとんどすべて小規模なワイナリーのものです。

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 ▲ニューヨーク州の主なワイン産地

ニューヨーク州にはほかにも重要なワイン産地が2つあります。
ひとつはニューヨーク市の北を流れるハドソン川沿いの産地、ハドソン・リヴァー地域 Hudson River Region
もうひとつはロング・アイランド Long Island です。

ロング・アイランドAVAの中には、ノース・フォーク North Fork of Long Island とハンプトンズ The Hamptons という2つのサブAVAが含まれています。

17世紀中頃にニューヨークのマンハッタン島に初めてブドウを植えたのはオランダ人でした。
現在のニューヨークは17世紀前半はオランダの植民地で、もとはニュー・アムステルダムと呼ばれていました。

そもそも当時のオランダ東インド会社に雇われた探検隊のヘンリー・ハドソンという人物がこの地を発見し、
そこに流れている川をさかのぼって流域一帯をニュー・ネーデルラント、河口の島(= マンハッタン島)をニュー・アムステルダムと名づけたのです。その川は、ハドソンにちなんでハドソン川と呼ばれます。

さて、1960年より前は、ニューヨーク州のワインのほとんどは北米の土着品種(ヴィティス・ラブルスカ)であるコンコードとかデラウエアとかナイアガラや、フランス品種とアメリカ品種の交配品種であるセイベルなどから造られていました。

もともとこの一帯ではブドウジュースや製菓用のブドウ生産が広く行なわれており、その用途であればコンコードなどの北米品種でもよいのですが、こうしたブドウでワインを造ると独特の風味が出てくるため、あまり一般には好まれない傾向があります。

やはり美味しいワインを造るにはヨーロッパ原産のヴィティス・ヴィニフェラのブドウがよいのですが、
当時の一般的な認識では、ニューヨーク一帯の寒い気候はヴィティス・ヴィニフェラの栽培に向いていないと言われていたのです。

【参考記事】ワイン用のブドウはヴィティス・ヴィニフェラ!その中に1万種類以上のブドウ品種があるから一生かけても飲みきれません

しかし1953年、ロシア移民で後に偉大な博士となるコンスタンティン・フランク氏がフィンガーレイクスでリースリングの栽培育成に成功し、それまで一般的だった否定論が間違いであったことを証明しました。
彼はその後も様々な
ヴィニフェラのワイン用ブドウをこの地で育てました。

1961年には、この地で最初のヴィニフェラのワインが、彼のワイナリー Dr.Frank's Vinifera Wine Cellars で造られました。
彼の息子のウィリー・フランク氏は、ヴィニフェラによるワインと高品質スパークリングワインの品揃えでワイナリーを経営し、成功させました。
そのワイナリー(現名称 Dr. Konstantin Frank Wine Cellars)は現在も続いており、フランク博士の孫であるフレッデリック・フランク氏が率いています。

1973年になると、ニューヨーク市街地から車で2時間ほど離れたロング・アイランドのノース・フォーク地区もヴィニフェラ・ブドウの栽培に適した気候や土壌を持っていることが注目されるようになりました。
穏やかな海洋性気候でフランス・ボルドー地方の気候にも似ているといわれるこの地では、現在約40軒のワイナリーが稼動しており、その数は増え続けています。

ワシントン州と同様にロング・アイランドは特にメルローに向いているようですが、シャルドネ、リースリング、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワールなども造られています。

日本の店頭では目にすることの少ないニューヨークのワインですが、もしも見かけたら、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(2017年11月4日)